+-----------------------------------------------------------------------+ | JPNIC公開文書著作権表示 (Copyright notice of JPNIC open documents) | | | | この文書はJPNIC公開文書であり、著作権は日本ネットワークインフォ | | メーションセンター(JPNIC)が保持しています。JPNIC公開文書は誰でも | | 送付手数料のみの負担でJPNICから入手できます。また、この著作権 | | 表示を入れるかぎり、誰でも自由に転載・複製・再配布を行なって構 | | いません。 | | 〒101-0052 東京都千代田区神田小川町1-2 風雲堂ビル1F | | (社)日本ネットワークインフォメーションセンター | +-----------------------------------------------------------------------+ "Working Group B (WG-B) Report Written by Michael Palage, Chair of WG-B Presented to DNSO Names Council On April 17, 2000" 翻訳文 (ftp://ftp.nic.ad.jp/jpnic/translation/dnso-wg-b-report-j.txt) (社)日本ネットワークインフォメーションセンター 最終更新 2000年 5月 2日 この文書は http://www.dnso.org/dnso/notes/20000417.NCwgb-report.html を翻訳したものです。JPNICはこの翻訳を参考のために提供しますが、その品 質に責任を負いません。 ------------------------------------------------------------------------ 検討部会B(WG-B)− 報告書 作成者:WG-B議長Michael Palage 提出先:DNSO Names Council 提出日:2000年4月17日 要約 当検討部会では、ここ12ヶ月間にわたり、世界知的所有権機関(WIPO)の報 告書第4章について徹底した討議を重ねてきたところである。その間、いくつ かの基本的な問題点について、徐々にコンセンサスが形成されてきたように見 受けられる。もっとも、その他の問題については、かなりの意見の相違が残さ れている。本報告書で当職は、当検討部会(Working Group)設置以来明らか となってきた合意点、ならびに意見の相違点について概観してみたい。 経緯 当検討部会Bは昨年のベルリン会議において創設され、前記WIPO報告書第4章 について対応することを職責として与えられた。その時以来、当部会は、最近 のICANNの地域会議ごとに3回会合をもってきた。当検討部会B(WG-B)のメー リングリストには、現在、120名以上が登録されている。この参加者のうちの 過半数は商標業務に携わる弁護士および/または企業のブランド管理担当者で あるものの、その他の参加者は、DNSO(Domain Name Supporting Organization)の6種の構成員区分(constituencies)にわたって広く分散 している。 検討部会Bが形成された昨年5月、Jonathan CohenがNames Council(ドメイ ン名審議会)の共同議長に指名され、当職も共同議長に選任された。しかしな がら、JonathanがICANN理事会の理事の選挙に立候補することを決意してから は、数ヶ月にわたって、当職がもっぱら議長としての役目をはたしてきた。昨 年12月、Names Councilは Kathy KleimanとPhilip Sheppardの2名をNames Councilの代表者として指名し、両名はNames Council共同連絡担当代表者となっ た。 1999年10月、当該時点での検討部会の参加者の間で投票が行われ、そしてドメ インネームシステムに関して、著名商標の権利を保護するために何らかの仕組 みが必要であるとのコンセンサスに至った(42名の投票者中30名の賛成−71% の賛成をもって)。 かかる投票の結果を踏まえて、当検討部会の参加者の間に、方針提案書 (position paper)の提出を求める要請が行われた。そして、計10通の方針提 案書が提出された。寄せられた提案書の一覧は、個々にHTMLリンクを付けたか たちで、http://www.dnso.org/wgroups/wg-b/Archives/ msg00505.htmlで閲覧 に供している。さらに、アメリカ知的財産法協会(American Intellectual Property Law Association:AIPLA)は、さまざまな提案書の内容を要約し、 かつ自身の推奨案を示した提案書を提出している。この提案書は、 http://www.dnso.org/wgroups/wg-b/Archives/ msg00604.htmlで閲覧に供して いる。 受領した10通の方針提案書のうち、当検討部会が直面している問題点について 実質のともなった解決策を提言しているのは5通だけであった。これら5通の 提案書の各々について、その要旨を以下に略述する。 「非営利(Non-commercial)」Constituency方針提案書: この方針提案書で は、次のように論じている。著名標章(famous mark)の一覧表を作成して、 一覧表記載の呼称を新gTLDの使用可能範囲から除外する取扱いとすれば、既存 の著名標章保有者の権利が大幅に強められることとなる。なぜなら、なんらか の関わりで著名な標章を保有している者は、新gTLDを将来保有するであろう者 が、主権国家の国内法制では明らかに保護されているところの、文字(word) を非営利的(noncommercial)および一般的(generic)な方法で使用する途を 閉ざしてしまうことになる。これでは、個人、非営利的団体および小規模企業 が、本来保護されているはずの非営利的(noncommercial)な使用目的で、ド メイン名を新gTLDに登録する可能性を奪ってしまうことになり(例えば、校内 のグループがアメリカの大手電話会社の名称である「bell」を、あるいは子供 向けの非営利行事にコンピュータメーカーの名称「apple」に使用しようとす る場合)、また、本来保護されている一般的(generic)な使用もできなくな るおそれがある(例えば、「bell」をベル(鐘)の製造業者が、あるいは 「apple」をリンゴの栽培農家が使用しようとする場合)。この「非営利」構 成員区分の提案書では、WIPO/IPC案の線ではなく、むしろ、「.TMK」というトッ プレベルドメイン(他では、これを「.FAME」と呼んでいるものもある)を著 名標章のために創設して、そのドメインでWIPOが著名標章の所有者一覧表を作 成することとし、これらの著名名称についてはこの新gTLDで登録することにし て、そしてこのgTLDに「e-コマース向けのドメイン[場所]」というようなブ ランド名を付けてはどうかと提案している。 Michael Palage方針提案書: この方針提案書は、WIPO報告書で設定された基 準を用いた、著名標章の一覧表を作成すべきであると論じている。しかしなが ら、この提案書は、同時に、かかる一覧表の記載項目が増えすぎて制御不能に おちいらないような防止手段を提供するため、他の客観的な基準も併用するこ とを提唱している。このPalage方針提案書は、著名商標の所有者には、商標の 文字列に変更を加えた類似表示(sub-string variation)からの保護を与える ため、サンライズ[立ち上げ]期間中に、ドメイン名についての類似表示をい くつか登録することを認めるものともなっている。また、かかるサンライズ期 間は、かようなトップレベルドメインについて一般公衆が登録できるようにな る前に、一定期間、設けられるものとしている。 Eileen Kent 方針提案書: これは、方針提案書提出期間内に提出された提案 書であり、すべての商標所有者が通知を受けられるシステムに、有料で加入で きる自由市場システムを設立するよう提唱している。なお、この案では、著名 標章一覧表の創設は提唱されていない。 Harald Alvestrand方針提案書: この提案書もまた、方針提案書提出期間内に 提出されたものであり、WIPOが十(10)ないし百(100)件の標章をおさめる一定 の著名商標一覧表を創設することを提唱する。この案では、著名標章の所有者 には、当該標章と、数個のほとんど同一(identically similar)の標章、つ まり、「's」とか「−(ダッシュをつけた)」を、登録することが許されるこ とになっている。仮に著名商標の所有者が、当該標章を登録しない途を選んだ 場合には、インターネット利用者に対しては、かかるドメイン名は意図して使 用されないことになっている旨を知らせるデフォルトページに誘導することを 提唱している。 「知的財産(Intellectual Property)」Constituency方針提案書(第1版): IPC(Intellectual Property Constituency)の最初の提案書は、本質的には、 WIPO報告書第4章に規定された基本原則を採用するものであった。 これらの方針提案書の公表に続いて、「レジストラ」Constituencyは、いくつ かの方針提案書が登録手続に関連してフィルター[排除審査手続](filter) の使用を提唱した時点から、対応活動を開始した。カイロにおけるICANN地域 会議の前に、「レジストラ」は以下の方針提案書の草案を作成した。 レジストラ案(第1版): 「レジストラ」Constituencyは、著名商標の保有 者の権利を保護するためにサンライズ期間を利用することを支持している。し かしながら、「レジストラ」は、著名商標一覧表の創設をめぐる困難性および 見解の不一致を考慮して、登録済みの商標所有者すべてが参加できるようなか たちのサンライズ制度を支持しているのである。 カイロ会議の前に、Names Council共同連絡担当者両名は、以下の方針提案書 を、検討部会BおよびCの両方に回覧した。 Philip Sheppard/Kathryn Kleiman妥協方針提案書: つい最近Names Council から任命された、WG-Bとの間のNames Counsel共同連絡担当代表者である SheppardとKleimanは、一見すると埋めることが不可能な溝を埋めるための作 業を、協力して開始した。Sheppardが起草し、現在、WG-BおよびWG-Cに回覧さ れている提案書で、SheppardとKleimanは、「差別化原理(Principle of Differentiation)」に大幅に依拠した新たな「共通基盤」を提案した。この 「差別化原理」とは、「選択されたgTLDの文字列はインターネットユーザーに 混同をもたらすものであってはならず、また、それゆえ、gTLD[におけるドメ イン名の]文字列は、文字列、および/またはかかる文字列に関連付けられた 販売活動(marketing)および機能性(functionality)によって、明瞭に見分 けられるものでなければならない」というものである。この提案書では、明示 的にはチャーター(chartered)付きドメイン(特定分野型)は提唱されてい ないものの、目的非限定(オープン)のドメインであっても付加価値をもつべ きであり、したがって、「.com(dot com)」の物まね以上のものでなければ ならないことが前提とされている。両執筆者は、ドメイン名がこれらの原則を 基礎として選ばれることがいったん周知されれば、商標をめぐる問題点に対す る個々の解決策について合意を見い出すことは、かなり容易なものとなると信 じている。 その他の原則は、「弁別可能性」という目標を達成するためのものである。こ こで「弁別可能性」とは、それぞれの新gTLDが、インターネットユーザーに対 して、その目的および用途をそれぞれ異にしているとの認識を与えるものであ れば、動力源としての「coke[コークス]」と飲料としての「coke[コカコー ラ]」は新gTLDのドメイン名として共存できるというものである。この提案書 では、明示的にはチャーター付きドメインは提唱されていないものの、目的非 限定(オープン)ドメインであっても付加価値をもつべきであり、したがって、 「.com(dot com)」の物まね以上のものでなければならないことが前提とさ れている。両執筆者は、ドメイン名がこれらの原則を基礎として選ばれること がいったん周知されれば、商標をめぐる問題点に対する個々の解決策について 合意を見い出すことは、かなり容易なものとなると信じている。 カイロ会議において、「知的財産(Intellectual Property)」Constituency (IPC)は、次のとおり方針提案書の改定版を公表した。 「知的財産」Constituency方針提案書(第2版): この改定された方針提案 書では、著名標章の一覧表[制度]を創設して、かかる一覧表に掲載された著 名標章と同一またはほとんど同一のドメイン名の登録を排除するために使用す ることが提唱されている。著名標章の一覧表を作成するにあたっては、1999年 4月30日の報告書「WIPOインターネットドメイン名プロセス」の第284節およ び第285節に記載されている規準を基礎とされる。 カイロにおいて「レジストラ」および「IPC」の間でのConstituencyにまたがっ た交渉が行われた後で、「レジストラ」はサンライズ期間に関し使用するとこ ろの、WIPOによる著名標章の一覧表創設すを支持することに関心をあらわした (「レジストラ」[意見書](第2版))。カイロを離れるにあたって、「レ ジストラ」と「IPC」は、共同の基盤を造り上げる努力を協力して継続してい く意欲を示した。このことは先月、Names Council に提出した当職の検討部会 B現状報告書で報告したとおりである。 当職が本報告書を提出しなければならない締切日の前日、4月14日(金曜日) に、IPCはさらに改定を加えた方針提案書を当職に提出してきたので、以下に その内容を要約して、これを付属書類第1として添付した。 「知的財産」Constituency方針提案書(第3版): この改定された方針提案 書は、新トップレベルドメインの発足にあたって、サンライズ案を組み込むこ とを提唱している。サンライズ期間中に、商標およびサービスマーク(「標章」) の所有者は、かかる新ドメインの登録を一般公衆に開放する前に、先願制の原 則にしたがって、その標章を新トップレベルドメインにドメイン名として登録 することができるようにする。また、「フィルター」を使わずにすむかたちで 標章の文字列に変更を加えた類似表示(sub-string variation)から標章を守 るために、商標の所有者は当該標章の類似表示20件を登録することができるよ うにしてはどうかというのである。 この案は、カイロ会議以前のレジストラによるの第一「サンライズ案」とほと んど同一である。このレポートが当職に提出された時間的関係から、当検討部 会の時間が残されていなかったため、残念なことに検討部会Bの参加者の間で、 適切な審議を行う十分な時間を設けられなかった。 最近の「IPC」と「レジストラ」の間での進展にかかわらず、検討部会の多数 のメンバーのあいだには、「統一紛争解決ポリシー(Uniform Dispute Resolution Policy)や、アメリカ合衆国の「反サイバースクワッティング法」 のような国内法、そして現在実施に移されつつある新商標監視(monitoring) サービス以上に商標を重ねて保護することについては強い反対が根強く残って いる。これらの見解の多くについては、付属書類のかたちで添付しておいた。 コンセンサスを得た項目 もっとも最近のIPC案に見ても、以下の点につき明瞭なコンセンサスが得られ たと報告できることを、当職は喜びとする。時間が足らなかったため、当検討 部会Bの参加者の間で正式な投票を実施できなかったが、当議長は、Names Council共同連絡担当者と協議の上、以下の点について正にコンセンサスの得 られたと思量する次第である。 1. 現時点では、広範に著名な標章の一覧表を作成する必要性があるようには 見受けられない。 コメント: 広範(universally)に著名な標章の一覧表[制度]を創設すると いうことは、困難な政治問題化してきた。例えば、誰がその一覧表を作成する のか、使用される規準はどうあるべきか、一覧表の容量の大きさの制限は、等々 の争点について激しい論争が展開されてきたが、これといって明確な妥協点は 見えてこなかった。「IPC」および「レジストラ」というConstituencyによっ て推進されてきた現在のサンライズ案では、かかる一覧表の創設は求められて いない。しかしながら、広範に著名な標章の一覧表が創設された場合、および その時は、ICANNにおいても、既存のgTLDの登録手続にかかる一覧表を適用す べきかを検討してみるのが賢明であろう。 2. 商標所有者にどのような保護を付与するかは、当該トップレベルドメイン の種類如何にかかっていることについては、コンセンサスが存在するように見 受けられる。 コメント:この項目についてのコンセンサスは、サンライズ制度はあらゆる新 トップレベルドメイン、殊にある種の非営利ドメイン名については、たぶん必 ずしも相応しくないという認識に基づいている。しかしながら、このコンセン サス項目については、多くの付随的な問題点が条件としてつけられている。す なわち、チャーター付きgTLDの範囲とか、チャーター(特定目的利用規約)の 強制実現の仕組み等である。何をもって非営利のトップレベルドメインの構成 要素とするかを決める手続の策定作業は、まさに検討部会Cに付託された問題 である。しかしながら、かかるコンセンサス項目のいかなる内容も、いったん チャーター付きドメインのドメイン名の登録者がチャーターに違反した場合と か、その他法的に強制実現の対象となる権利を侵害した場合に、統一紛争解決 ポリシー(UDRP)やその他の法的手続からの免責を設けるものと解釈されては ならない。 合意はあるが、コンセンサスには至っていない点 検討部会Bでは、既存の法律およびICANNの活動および権能の範囲におさまる ようなかたちで、商用gTLD内での商標所有者の現実的な保護をはかるための妥 協点を見い出すべく、懸命の努力を続けてきた。「サンライズ」案は、すべて の商標について事前登録を許すというもので、いまや「レジストラ」や「知的 財産(IP)」のコミュニティの人々の間に強い支持がある。「非営利」および 「小規模企業」のコミュニティのメンバーの何人かは、明確な限定と安全策が 講じられることおよびこれらが遵守されることを条件にしてではあるが、この 案に賛意を表している。 これまで概要を紹介してきた様々な方針提案書に記載されているサンライズ条 項の基本原則のなかには、一般公衆の登録にむけて開放する前に、商標の所有 者にその選択した商用トップレベルドメインにドメイン名を登録することを可 能にするというものがある。それに加えて、商標の所有者に、登録する標章に 類似するかまたはほとんど同一のドメイン名の類似表示を数件登録する権利を 与えるというものもある。「レジストラ」は、登録できる商標の類似表示を5 件とすることを提案しており、「知的財産」の現在の提案は、類似表示を20件 としている。 この妥協案を採用すれば、レジストリが、潜在的に商標権を侵害するおそれの あるドメイン名につき、継続的かつ永続的なかたちで排除審査(filter out) する必要性は解消されるであろう。より重要なことは、この事前登録権は、当 該トップレベルドメインがルートに追加される前の一定期間だけ存続するもの であって、サンライズ期間の終了後は商標の所有者になんらの権利または特権 を与えるものではないということである。 非営利および小規模企業のコミュニティのメンバーのうち何名かは、その支持 を与えるについて次の条件を付けている。この「全商標にサンライズ期間を与 える」という原則を適用するのは、商用特定分野型gTLD(chartered commercial gTLD)(例えば、「.CAMERA」または「.AIRLINES」のような)に 限定されるべきであり、また、限定された当初期間(ときとして、「試行 (testbed)期間と呼ばれる)に導入され、また限定されたいくつかの新gTLD に限って適用されるべきというのである。これらの防止策をとれば、既存の業 者に有利な偏向を永続的にもたらすことなく、商用の新gTLDを導入することに より混同の機会が生じる可能性のある初期の期間に商標の所有者を保護するこ とができるだろう。 この合意事項が、当検討部会でのコンセンサス事項と方向性を一にすると思わ れる所以は、以下のとおりである。 ・ 世界的に著名な標章の一覧を創設するものではない。というのは、かかる 標章は、レジストリ, レジストラそしてドメイン名保有者の個々の所在国によっ ては著名であったり、著名でなかったりする可能性があるから。 ・ 世界的に著名な標章の一覧を創設するものではない。というのは、これは ICANNの活動範囲および任務の範囲外のことにあたるおそれがあるから。 ・ 商用ドメイン内で大企業および小企業の商標所有者両方に、先願制の原則 に則って保護を与えるものであること。 ・ gTLDおよびドメイン名を、非営利の言論および利用に供することを保護す るものであること。 ・ そして、新レジストリの当初の開始段階(新gTLDのテストヘッド期間と呼 ばれる)に、商標保護の明確なポリシーがないために新gTLDで大企業の商 標の所有者の保護を怠ったときは訴えられかねないと懸念している新レジスト リに保護を、まさに与えるものであること。 かくして、このサンライズ案は、検討部会Bにおける諸意見の間隙を埋める実 用的な途であり、新gTLDが合理的に業務を開始することができるようにするも のである。われわれは、かかるサンライズ案の詳細については、インターネッ トコミュニティ、Names Council、ICANN理事会で詰めの作業を行う必要がある ものの、この方向性(proposition)それ自体は、来年度中にも行われるドメ イン名空間の拡張という目標を、制御された合理的な方法で達成する上で、最 良の方法であると確信している。 見解の相違点の要約 サンライズ案を提唱する最近の「IPC」および「レジストラ」案に対しては、 当検討部会の何名かの参加者のなかには、技術的に可能でないとか、法的な根 拠がないとか、検討部会Bの本来の権限を定めた憲章の範囲を大幅に超えるも のであるとして、この案を批判する向きもあった。当職は、本日までに受領し た批判すべてを、本報告書に付随する付属書類の一部として添付するように努 めた。 将来、より検討を深めるべきもう一つの問題は、サンライズ期間中に、商標の 所有者の間で潜在的な競合が生じた場合に、これをいかにして処理するかとい う問題がある。例えば、現在のIPC案では、先願制モデルを採用するように提 唱しているが、他方、元来のレジストラ案では、競合する登録請求の優先順位 を決める方法として統一紛争解決ポリシー(UDRP)を拡大適用するする可能性 がさぐられている。この問題を将来さらに検討する場合にも、サンライズ期間 中における商標紛争を取り扱う際に利用される手続ならびに仕組みを策定する 作業は、DNSOの構成員を縦断的に代表する代表者によって構成される起草委員 会(drafting committee )が設けられる場合には、たぶんそこで扱われるの がもっとも相応しいであろう。 もう一つ検討を要する点は、最新のIPC案に入れられている「職権削除(take down)」条項にともない、契約書の文言をいかにすべきかという点である。 なるほど、レジストラは、現在でも、不備のある登録データを補正する義務を 負ってはいるが、この職権削除条項に関連してレジストラが責任を負うことの ないように防護措置を講じておくためには、文言を付け加える必要があるよう に思われる。繰り返しになるが、この案を将来さらに検討する場合には、この 検討作業は、問題を解決するための起草委員会が取り扱うのがもっとも相応し いものである。登録取扱機関は、IPC案にとって職権削除条項が不可欠のもの であるという事実に留意すべきである。これは、サンライズ期間中の登録の前 に、登録商標が存在しているかを検証する義務をレジストラは負っていないこ とからも、特にそうである。また、サンライズ期間中の登録が職権削除された 場合にどのような問題が起きるか、つまり、登録請求者が複数あったときに誰 がそのドメイン名につき優先権を得るのかということについても、さらに何ら かの考慮をはらう必要があるように見受けられる。 検討部会B議長、Michael Palageのコメント 一見したところ、最近、提案された「IPC」サンライズ案および「レジストラ」 の元来のサンライズ案は、表面的には、著名商標だけから登録商標すべてへと、 商標の所有者に対する保護の範囲を大幅に拡張しているように見受けられる。 しかしながら、当職の見解では、すこし詳しく検討してみると、この潜在的な 妥協策は、新トップレベルドメインの試行(test)期間中の商標の権利保護に 向けて迅速な解決方法を提供するものであることが明らかになると考えている。 当職は、検討部会Bの議長の任にあると同時に、「レジストラ」Constituency の事務局長でもある。なるほど、今にいたるまで、当職は最近のIPC案につい て、その詳細についてすべてのレジストラと協議することはできなかったが、 当職が話しをしたレジストラのほとんどは、将来のコンセンサス構築作業にあ たって、サンライズ案が基礎を提供することができるとの点については、慎重 ながらも楽観的な見通しを示している。いくつかのレジストラは実施および手 続面で懸念をもってはいるが、この最新のIPC案に記録に残るかたちで反対し ているのは1社にとどまる。付属書類第5を参照。 Jonathan Weinbergは、検討部会Cにおいてコンセンサスを形成しようと努める にあたり、忠勤の志に相応しい仕事をなしとげたものの、当検討部会の参加者 いく人から表明された懸念に鑑みると、以下の点については、パブリック・コ メントを求める報告書を作成するにあたって、Names CounselおよびICANNのス タッフにおいて、さらに研究する必要がある。 ・ 商標の権利を保護するための個々の防護策を明確化できていない以上、6 ないし10のトップレベルドメインを設けるという現在の案は、無謀すぎるので はないか。 ・ 提案されているいずれのチャーター付き(特定分野型)トップレベルドメ インに規定すべき法的な要件は、チャーター(特定分野規約)違反の場合の対 応機構も含め、明確に規定しておく必要がある。 Names Counsel連絡担当者のコメント I. Philip Sheppard(ヨーロッパブランド協会(European Brands Association)兼Names Councilの商業・ビジネス(Commercial and Business) Constituency代表) 「検討部会Bは、きわめて知的でかつ思慮に富んだ啓発的な議論を行った。当 グループは、この主題が一方で知的財産権に関わるものでありながら、その目 標は、消費者およびインターネットユーザーを詐欺、不当表示および混同から 保護することにあることを理解している。 当検討部会内で協議された選択肢のなかには、ドメイン名のスペースを拡張し ながら、多様性、公平性および消費者保護を生み出すための解決策が示されて いる。 新ドメイン名を創設するという作業は、これによりICANNプロセスの真価が問 われる重要な活動となる。Names CouncilおよびICANN の理事会は、WG-Bと WG-Cの作業結果を等しく考慮する必要がある。」 II. Kathryn Kleiman(コンピュータ機器協会(Association for Computing Machinery)インターネットガバナンスプロジェクト者兼Names Councilにおけ る非営利(Noncommercial)Constituency代表者) 「検討部会Bの報告書は、検討部会Bのメンバーの熱心な作業の結果であり、 Michael Palageがきわめて多様な見解や要求を束ねて、コンセンサスを造り上 げるという強い指導力を発揮したたまものである。この報告書は、公開通知期 間中、DNSO Names Councilで閲覧に供され、その後、公開通知期間中、ICANN 理事会で閲覧に供され、そして本年夏の日本におけるICANN会議で公開討論に 付される。 この報告書が今必要としているのは「あなた」である。つまり、インターネッ トコミュニティからのコメントや、意見、そしてアイデアが必要とされている。 私どもは、少しの分野でコンセンサスを、その他いくつかの分野で合意を得た が、多くの疑問も残されている。WG-Bの作業を身近に目にしていた私どもにとっ ては、残された問題の内容は明らかであり、はっきりしている。それ故、私は、 私のコメントの場を利用して、Names CouncilおよびICANNにコメントを寄せて いただければ大変有意義であると私が考えていることを、皆様にお伝えしよう と思う。もちろん、この他にも皆様がコメントを寄せられても良いことが多々 あることも確かである。下記の問題について私に問い合わせたいと思われた場 合には、遠慮なくご連絡ください(KathrynKl@aol.com)。 (1) すべての検討部会全体にまたがる二つの問題点 次の二つの問題点については、どのような検討部会であろうとも応えなければ ならない。 + 各プロポーザルは、既存の法律に適合しているか?この場合には、WG-B報 告書およびそのコンセンサス、ならびに合意点は、商標法の許容する範囲およ び制限に合致しているか? + ICANNは、その付属定款およびアメリカ合衆国商務省との間の契約に定められて いるとおり、その活動範囲が限定されている。そこで、WG-Bの提案は、ICANN の活動範囲および任務内におさまっているか? (2)  新gTLD内で著名標章(Famous Mark)を保護する必要があるか? 1999年10月の投票で、著名標章を保護すべきだという件は、一票のみの投票で 可決されたが、賛成票を投じた投票者は、直ちにその態度を変えようとしたこ とに注意すべきである。たった一票の基礎という危うい状態で出発したため、 新gTLD での著名標章の保護に向けた支持は、せいぜい微温的にとどまるかも しれない。 本報告書にコメントを寄せる人に対し、以下の質問がある。特に、統一紛争解 決ポリシーの成功および強力なアメリカ合衆国反サイバースクワッティング法 の施行(この保護は、WIPOがその報告書、特に第4章「著名標章の保護」)を 起草していた時点では存在していなかった)を考慮すると、新gTLDについて、 特別な商標保護措置を講ずる必要性が現在もあるだろうか? 1. 仮に商標の保護が必要であるとして、どのような仕組みをとるべきか? 仮に、新しい商用gTLDの追加初期における混乱の山を超えるため、少なくとも 一定のテストベッド期間については、「サンライズ期間」で提案されている商 標の保護方法をとるのが良いとして賛成する場合に、いくつかの鍵になる課題 をさらに定義すべく、助力をいただきたい。 + テストベッド期間はどれくらいの長さにすべきか? + どの種類のgTLDに適用すべきか(すべての商用gTLDか、あるいはチャーター 付きの、または使用目的限定のgTLDに限るべきか、あるいはその他?)? + どの種類の商標に、この保護方法を適用すべきか(すべての商標、あるいは1年 以上経過した商標に限るか、あるいはその他)? + サンライズ期間の事前登録制度は、商標の類似表示にも適用すべきか。そ の場合、どのような種類の類似表示に、そしてどれくらいの数の類似表示 に適用が許されるべきか(例えば、句読点を付加した形、複数形、任意の 数文字を付加した形、あるいはその他)? 2. 新gTLDで、非営利の言論および活動をどのように保護すべきか? サンライズ期間の商標の事前登録制度を、非商業的なgTLDに適用すべきでない というのは、一般的な合意点であり、コンセンサスでさえあるかもしれない (それは、constituencyの境界を超えて広がっているので)。これは、良い合 意事項であり、国内および国際法とも軌を一にするものである。しかしながら、 非商業的gTLDをいかに定義すべきかという点についてはコンセンサスがない。 さらに、非営利のドメイン名の保有者に特別な負担を課すようなさまざま異なっ た提案がなされており(いずれも最終案とはなっていないが)、不幸なことに、 これら提案はそういったドメイン名をはるかに容易に取り消すことを認めるも のとなっている。 以下の諸点についてのインターネットコミュニティ、特に非営利のコミュニティ の人からのコメントがあれば大変有益であろう。 + 非営利のgTLDはどのように使用されると考えるか(現在および将来)? + 非営利のコミュニティは、チャーター付きのgTLDのみならず、差別化され ていない(チャーター付きでない)gTLDも必要としているか? + ICANN(あるいはICANNが新gTLDsを承認するための設立するあらゆる承認 機関)は、どのようにして非商用の新gTLDを認めればよいか? + 非商用gTLDのドメイン名の保護は、商用gTLDのドメイン名の保護よりも弱 くすべきか? + 非商用gTLDのドメイン名については、どのような状況下で、異議申立ある いは取消の可能性に服するべきか? + あなたの国では、非営利の言論(および非営利のドメイン名もまた)は、 現行法でどのように保護されているか? 3. 新gTLDを導入する新レジストリをどのように保護するか? 新gTLD内に商標保護の制度を設ける主な理由の一つは、商標の所有者が新レジ ストリを訴える懸念であった。この懸念から、Network Solutions, Inc.は、 1995年にドメイン名紛争ポリシーを策定しましたが、そこでは、ドメイン名と 商標は同一の取扱いを受けていました。当該ポリシーには、伝統的な保護の基 礎がなく、商標法の制限も考慮していなかった。それは、単にNetwork Solutionsを訴訟から守るためだけのものであった。その結果、何千というド メイン名を所有する個人、非営利の組織、そして小規模企業は、ドメイン名を 喪失する結果となった(この原因となったのは、NSIの手続もあったが、同時 に、警告めいた書面や脅しも大きな働きをした)が、これは法律にも、また公 平性にも矛盾したものであった。 われわれは、どのようにして、レジストリに対して、現行の法律が商標の所有 者に与えている保護範囲を超えるような保護を与える地位を認めることなく、 レジストリを保護することができるのだろうか。我々は、あなたのコメントを 必要としているのである。 あなたの国で、商標/ドメイン名の紛争に巻き込ま れたくないと思っているレジストリは、国内法または判例によって保護されて いるか? gTLDのレジストリの中立性および不可侵性を強調するICANNのポリシー は、あなたの国のレジストリが、あなたの国で提起されるかもしれない訴訟を 避け、勝訴するのに役立っていると考えるか?新レジストリに保護を与えると して、どのような保護ならICANNの活動範囲および任務の範囲内におさまると 考えるか? (6(3?)) 後記−Michael Palageへの心よりの感謝 検討部会Bの議長であるMichael Palageは、検討部会の議長がいかに激職をこ なすべきかという点について新たな先例を打ち立てた。彼は、オンラインで、 あるいは自ら出席するかたちで全世界の会議に参加し、数え切れない回数の公 式、非公式のフォーラムに出席し、調停者として活動し、すべての方面の意見 を聞き、メンバーを励ました。彼は、彼の職責が検討部会を二分している溝 (現実には深淵であったのであるが)を埋めることであることを理解しており、 4年にわたり新gTLDの発足を見守ってきた。Michaelは、彼の出身母体である レジストラコミュニティの希望を誰もが理解できるようにしたのみならず、他 のConstituenciesやインターネットコミュニティに属する人たちの希望も理解 できるように努力した。マイケルがこの仕事に日夜費やした時間数は数えるこ とができないくらいである。彼には私の感謝、謝辞および賞賛をささげたい。 彼の成し遂げた仕事は今やあなたの手にわたされた。つまりインターネットコ ミュニティがこれを引き継ぐのである!」 敬具 Michael D. Palage 以下のドキュメントについては付録を参照のこと。 付録1 The Intellectual Property Constituency Sunrise Plus20 付録2 Office of Advocacy ? US Small Business Administration 付録3 Open Root Server Confederation (ORSC) 付録4 Ellen Rony Personal Comments 付録5 TUCOWS Comments 付録6 Consumer Project on Technology 付録7 Professor Froomkin's Personal Comments 付録8 Mark Langston's Personal Comments